連絡先
小久保康昌
三重大学大学院
地域イノベーション学研究科
紀伊難病研究センター
〒 514-8507
三重県 津市栗真町屋町1577
Phone & Fax; 059-231-5117
E-mail:
kii-project@clin.medic.mie-u.ac.jp


活動概要

紀伊半島の神経風土病-筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン・認知症複合(Kii ALS/PDC)

紀伊半島南部の牟婁(むろ)地方には、進行性の筋萎縮症、パーキンソン病に似た動作緩慢と筋強直、意欲低下が目立つ認知症の3症状出現を特徴とする神経風土病があり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)・パーキンソンン認知症複合 (PDC)と呼ばれる。多発地名にちなんで牟婁病と呼ばれることもある。脳には、神経細胞とグリア細胞の中に、細胞骨格形成に関与するタウ蛋白のリン酸化産物が、異常蛋白として大量に蓄積する。グアム南部地域のチャモロ人にも類似疾患が多発する。近年、ALSの激減と並行してPDCの増加が確認され、生活習慣の変化と高齢化が病気の姿を変化させた可能性が考えられている。病気を起こす原因として、遺伝素因に何らかの環境要因が働いて多発や減少を引き起こした可能性があり、多面的に原因研究が進められている。

三重大学名誉教授 葛原茂樹

伊勢新聞に研究成果に関する記事が掲載(2024.3.23)

伊勢新聞に、「KiiならびにGuam ALS/PDC患者脳由来タウフィラメントのCTE(慢性外傷性脳症)パターン構造形成」に関する原著論文についての記事が掲載されました。

記事タイトル: 難病の発症原因はウイルス感染か 予防法確立に期待、三重大など発見

内容:三重大学の小久保康昌招聘教授らの研究グループは、世界で紀伊半島南部のごく一部地域などでみられる難病の神経変性疾患ALS/PDCが、ウイルス感染で発症する別の神経変性疾患と同種であることを発見した。ALS/PDCの原因特定や予防法確立につながる可能性が期待される。

小久保招聘教授によると、ALS/PDCは全身の筋肉が衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)や、体の震えなどを伴うパーキンソン病、認知症の症状が併発する難病で、国内では紀伊半島南部のみに存在している。

ALS/PDCは、脳や脊髄にタウタンパクと呼ばれるタンパク質が蓄積することで引き起こされるが、タウタンパクが蓄積される原因は分かっておらず、根本的な治療法は確立されていない。

研究グループはタンパク質の構造を保ったまま観察可能な「クライオ電子顕微鏡」でALS/PDCの原因となるタウタンパクを観察。頭部への外傷や麻疹ウイルスの感染で蓄積される別のタウタンパクと同じ構造を持つことを突き止めた。

東京都医学総合研究所やイギリスの研究機関などとの共同研究の成果で、科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に昨年12月に掲載された。

小久保招聘教授は「ALS/PDCがウイルス感染で引き起こされる可能性が示唆された発見。将来的にはワクチンなどの予防法に結びつく可能性がある」と話した。

出典URL:https://www.isenp.co.jp/2024/03/23/107788/(伊勢新聞HP)

関係論文が国際雑誌に掲載(2023.12.19)

Qiらによる「KiiならびにGuam ALS/PDC患者脳由来タウフィラメントのCTE(慢性外傷性脳症)パターン構造形成」に関する原著論文が国際雑誌「Proc Natl Acad Sci U S A(Impact Factor: 12.0)」に掲載されました。

Title: Tau filaments from amyotrophic lateral sclerosis/parkinsonism-dementia complex adopt the CTE fold

関係論文が国際雑誌に掲載(2023.10.24)

小林らによる「Kii ALS/PDC患者iPS細胞由来アストロサイトから放出される細胞外小胞のタンパク質プロファイリング」に関する原著論文が国際雑誌「Neurological Sciences(Impact Factor: 3.2)」に掲載されました。

Title: Protein profiling of extracellular vesicles from iPSC-derived astrocytes of patients with ALS/PDC in Kii peninsula

Kii ALS/PDC 診療マニュアル

「紀伊半島南部に多発するALSとALS-parkinsonism-dementia complex に関する診療マニュアル」日本神経学会に承認され、掲載されました。

Kii ALS/PDC患者様の診療にお役立てください。

【日本神経学会承認ガイドラインウェブページ】

URL:https://neurology-jp.org/guidelinem/index.html

過去病理標本の研究使用について (2015年4月4日)

ご遺族の皆様へ

 私たちの研究グループは、三重県内に多発する神経難病である「紀伊半島の筋萎縮症、パーキンソン症候群、認知症」について、長年診療及び研究を行っております。これまでに、多くの患者様及びご遺族のご意思により、本疾患の原因や発病メカニズムを明らかにし、新しい治療法を見つけるために病理解剖を行なわせて頂き、本疾患に関する数多くの新しい発見があり、それをもとに新しい治療法を見いだすことに尽力して参りました。しかしながら、未だ本疾患の根本的な原因は判明しておりません。
 今回、研究をさらに発展させて病気の原因を明らかにするために、これまで三重県内の病院や施設において2000年ころまでに病理解剖にご協力頂きました神経難病の患者様の病理標本について、新しい方法で再検討させて頂きたいと考えております。対象となられる患者様の病理検体は、病気の解明に不可欠であると考えております。
 しかしながら、亡くなられてからすでに数十年が経過しており、改めてご遺族から本研究に対するご同意を得ることが極めて困難な状況にあります。そこで、三重大学医学部倫理委員会に申請し、ご遺族の同意に代えて当該研究ホームページ上に標本の研究利用を一定期間公知することで研究同意に代えさせて頂くということで承認されました。
 ご遺族の皆様におかれましては、本疾患の原因を明らかにし、治療法や予防法を確立するために、ご理解とご協力を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。ご質問などございましたら、ホームページ記載のご連絡先に宜しくお願い申し上げます。

Kii ALS/PDCの「診断基準」および「重症度分類」の策定
紀伊ALS/PDCの「診断基準」および「重症度分類」が、先頃行われました日本神経学会理事会において承認されました。これにより、本疾患の診断指針がより明確になりました。
臨床神経病理検討会(Web CPC)

2020年6月27日(土)

臨床神経病理検討会(Web CPC)を予定しています。

環境医学研究所 市民公開講座 2017 「神経難病の克服に向けて」

日時: 2017年10月21日(土) 13:00〜16:30
場所: 名古屋大学 東山キャンパス 野依記念学術交流館
講師: 山中宏二(環境医学研究所 教授)、岡野栄之(慶応義塾大学 教授)、小久保康昌(三重大学大学院 招聘教授)、饗場郁子(国立病院機構東名古屋病院 神経内科 リハビリテーション部長)
URL: 案内パンフレット

第27回臨床神経病理検討会

2017年2月12日(日)

第27回臨床神経病理検討会を予定しています。