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診断基準

紀伊半島に多発する筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合

(Kii ALS/PDC;Amyotrophic lateral sclerosis/Parkinsonism-dementia complex of the Kii Peninsula)

2014年1月 日本神経学会承認

【疾患概念】

1.  地域性: 紀伊半島南部の和歌山県から三重県にまたがる、牟婁郡とその周辺地域(具体的には、和歌山県田辺市から三重県松阪市を結んだライン以南)の居住者、あるいは居住歴のあるもの。

2.  臨床病型と臨床症状: 臨床病型には、ALS型とPDC型がある。ALS型は、筋萎縮、線維束性収縮、腱反射亢進、Babinski徴候などの上位と下位の運動ニューロン障害症状を示し、古典的なALSと異なるところはない。PDC型は、パーキンソニズム(無動、筋強剛を主徴とし、時に振戦を伴いL-dopaへの反応は不良)と認知症(意欲低下を主体とした前頭葉皮質下性認知症症状)を単独、もしくは複合して示す。PDC型にALS症状を合併することがある。

3.  神経病理学的所見: ALS型では典型的ALS所見を認める。PDC型では黒質変性、基底核変性を認める。神経原線維変化の出現量は、PDC型では大量であり、ALS型では少ない。好発部位は、脳幹被蓋の諸核、黒質、マイネルト核、間脳、側頭葉内側部で、分布は加齢性変化を超えて広範囲である。PDC型の中にも、典型的 ALS病変を認める症例がある。アミロイド老人斑を伴う症例があるが、主体はタウ蛋白の蓄積である。

【診断基準】

1. 紀伊半島南部の和歌山県から三重県にまたがる、牟婁郡とその周辺地域(具体的には、和歌山県田辺市から

  三重県松阪市を結んだライン以南)の居住者、あるいは居住歴のあるもの。

2. 病型としては、

 a. ALS type: 古典的ALSの臨床像を呈する。

 b. PDC type: 進行性のパーキンソニズム(L-dopa反応不良)および認知症(早期から意欲低下が目立つ)、

     のいずれかあるいは、複合症状を示す。

 c. ALS/PDC type: a.とb.の合併。

3. ALS/PDCの家族歴がある。(家族歴は、ALSのみの場合、PDCのみの場合あるいは両者の場合を問わない)

4. 神経病理学的には、

 a. 古典的なALS病理+大脳皮質、脳幹に加齢性変化を超えて広く出現する神経原線維変化。

 b. 黒質変性、基底核変性+大脳皮質、脳幹に加齢性変化を超えて広く出現する多数の神経原線維変化。

 c. a+b.

Possible (1+2a)、(1+2b)のいずれかを満たす

Probable (1+2c)、(1+2a+3)、(1+2b+3)のいずれかを満たす

Definite (Possible or Probable)かつ(4のa、b、cのいずれかに該当)

 

【重症度分類 】

Ⅰ 日常生活は自立しており、発病前の社会生活を維持できている。

Ⅱ 日常生活は不自由があるものの自立している。社会生活上、就労や家事等が困難である。

Ⅲ 屋外歩行には装具あるは介助者による支えが必要である。日常生活にも部分的に介助を要する。

Ⅳ ベッド上または車椅子生活だが,意思疎通可能で、介助により摂食や排泄ができる。

Ⅴ ほぼ寝たきりで全面的介助が必要。