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紀伊半島のALSとPDCの原因

紀伊半島とグアム島のALSにおける大きな違いは、発生頻度の変化です。前述しましたように、グアム島では、ALSとPDC、特にALSが激減し、現在では、多発地域は消滅したと言われています。グアム島で起きたこのような劇的な変化は、現在のところ、環境要因の変化によるものと説明されています。すなわち、第二次世界大戦後米国の領土となったグアム島には、西欧文明が一気に流入し、それまでの伝統的な生活を続けてきた現地の人々は、食習慣やライフスタイルが大きく変化しました。アメリカナイズされたのです。このような変化とALSの減少が時期的に一致することから、それまでの食べ物や飲み水、あるいは生活習慣に原因があったのだと考えられています。

一方、紀伊半島では、日本の他の地域と異なった特別な食生活や生活スタイルがあるわけではありません。また、グアム同様に生活の西欧化も起こりました。にもかかわらず、疾患は無くなっていません。紀伊半島のALSに関しては、これまでに遺伝説、環境因説 (微量ミネラル/重金属説、ソテツに含まれる神経毒)、ウイルス説など様々な説が提唱されていますが、残念ながら原因は確定できていません。我々は、発病には、遺伝素因 (病気にかかりやすい体質)となんらかの環境要因が重なることが必要だと考え、発症危険遺伝子の検索、タウ蛋白やTDP-43蓄積のメカニズムの解明、環境要因によって引き起こされるさまざまな病的ストレスについて研究を進めています。(図6)

分子病態から見た神経変性疾患

紀伊半島におけるALSとPDCに関する研究の取り組みが、近い将来、神経変性疾患の病因解明や治療に結びつくことを願ってやみません。

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